民事再生(個人再生)手続きの流れ
民事再生とは、会社や個人が借金の返済に困窮しているときに、借金の一部を免責してもらい、残額を数年に分けて返済する裁判上の手続きをいいます。
民事再生は、会社更生の場合と個人更生の場合によって手続きが異なるため、以下2つを分けて説明いたします。
・会社更生における民事再生
①弁護士への依頼または裁判所への申し立て
弁護士へ依頼された後は、弁護士が必要書類をまとめ、裁判所へ申し立てることとなります。なお、裁判所へ申し立てる際には、後の監督委員等に報酬として支払われる「予納金」が必要となります。予納金の額は裁判所によって異なります。
②保全処分決定
裁判所への申し立てが適法にされたと裁判所が判断した際には、保全処分決定がされ、これ以降は一時債権者からの取り立てがストップされます。
また、保全処分決定の約2週間後には、裁判所から、再生手続きの開始決定がされます。
③債権者集会
債権者に民事再生に協力してもらうため、会社が主導して、債権者へ債務状況を説明する集会を行います。
また、この集会で債権者が主張した債権について金額をまとめ、裁判所へと提出する必要があります。
④会社財産の報告
現在会社が所有している不動産等の財産を評価し、財産目録を作成した後、裁判所に提出します。この記録によって再生計画案が練られるため、会社財産については記載漏れのないよう注意しなければなりません。
⑤再生計画案の作成及び決議
会社財産と借金を勘案して、どの程度債務をカットしてもらい、残りの額をどれぐらいの期日で返済するかを計画案にして作成します。その計画案が債権者に承認されたときは、後日計画案に従い債務の返済を行うこととなります。
なお、債権者決議は、出席した債権者の過半数が賛成し、かつ賛成者の債権が全体の債権額の半分以上である必要があります。
以上が、民事再生の手続きの流れです。
・個人更生の場合の民事再生について
①司法書士等への依頼及び受任通知の送付
司法書士等へ個人再生手続きを依頼することによって、以降直接貸金業者からの取立てをなくすことができます(貸金業法21条9号)。
②給料や財産の調査
個人再生手続きを運用するためには、
・債務総額が5000万円以内であること
・安定した収入があること
が条件となります。よって、当事者が現在安定した職業に就いているか、返済する見込みがあるか否かの調査をすることとなります。
なお、このとき源泉徴収票等の収入が分かる証書を保存しておく必要があります。
また、個人再生を利用するためには、再生計画における弁済率が破産における場合の配当率以上でなければならないという決まりがあります(生産価値保障原則)。
つまり、債務整理の中に、自己の財産を全て処分される代わりに借金を全額免除される「自己破産」がありますが、個人再生は、自己破産した時よりも多くの金額を弁済しなければなりません。
以上から、個人再生者がどの程度の財産を所有しているかは不可欠な調査と言えます。
③個人再生の申立て
裁判所へ、個人再生の申立てを行います。なお、このとき申立書類として
・申立書
・陳述書
・債権者一覧表
・添付書類(源泉徴収票,給与明細,財産目録,戸籍謄本,住民票など)
を揃えておく必要があります。
④個人再生委員の選任及び話合い
裁判所へ申立ててからおよそ1週間以内に、管轄裁判所付近に所属する弁護士が個人再生委員に選任されます。その後、個人再生委員、債務者、代理人弁護士の3者で、借金の返済が滞った経緯や今後の見通しについて検討します。
個人再生を利用しても問題がないと認められた際には、再生委員が申立てから3週間以内に、裁判所へ手続きを開始すべきとの意見を提出することになります。
⑤債権届出及び債権認否一覧書の提出
裁判所が個人再生手続の決定をした際には、各債権者に対して裁判所から開始決定書等が送付され、裁判所が指定した期間内に債権を届け出るよう通知がなされます。
そして、届出がされた債権を、再生計画者が債務の金額について誤りがないかを判断します(民事再生法125条1項参照)。なお、債務の金額について異議がある場合には、書面で異議を述べることもできます。
⑥再生計画案の提出
弁済する額、住宅特則ローン等について記した再生計画案を作成し、裁判所へ提出します。なお、債権者にとって再生計画案に不満がある場合には、このタイミングで同意または不同意の意見が提出されることとなります。
⑦裁判所の再生計画認可
個人再生委員及び債権者の意見を通して、裁判所が最終的に再生計画を認可するか不認可するかを決定します。
認可された際には、債務者は、計画に基づき弁済が開始されることとなります。
以上が、個人再生における手続きの流れです。
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